大ボケツ展

2007年07月16日

ハナイチモンメ(大ボケツ第二番)

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ハナイチモンメ(大ボケツ第二番)
1990
369×517ピクセル、93.5×130.7cm(注)
紙にデジタルプリント、スチレンパネル、カンバス(注)
発表歴:1990 個展「大ボケツ」HBギャラリー(東京)、2000 個展 佐野画廊(香川)、2001 病院ギャラリー(愛媛)、2005 個展「中ザワヒデキの展開展: 1990年から96年までのバカCG」ギャラリーセラー(名古屋)
Courtesy Gallery Cellar

(注)この図版はオリジナルデータだが、
   展覧会ではオリジナルプリントを出品している。
   上記サイズ(cm)、素材表記はオリジナルプリントについてのものである。

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大地震が起きましたが、海の日です。
中ザワさんの作品で、海といえば、この「大ボケツ」の作品でしょう。

と思って、
一品ブログがはじまったばかりの
1月10日に書かれた「スイカワリ(大ボケツ第一番)」を読み直しましたが、
我ながら作品の説明が理解しにくい文章を書いててびっくり・・・。
(しかも3月2日の「セルフポートレート(大ボケツ第三番)」にいたっては、
作品の説明じゃないし!!)

なので改めて、中ザワさんにヒアリング。
藤田「なんで今日の一品には『禁転載』があって、
『スイカワリ(大ボケツ第一番)』

『セルフポートレート(大ボケツ第三番)』
は違うんでしょうか」

中ザワ「これらは全部データで作ってて、
今日の一品はそのデータそのものだから『禁転載』が貼ってあるんだよ。
これまで紹介した作品は、
展覧会で展示するという目的のためにプリントアウトしたものを撮影した写真を
スキャンした画像です」
なので、
展示したときの素材が「紙にデジタルプリント、スチレンパネル、カンバス」になっています。

中ザワ「大きくすればするほど面白いだろうと思ったんだ。
色があせてしまう染料インクの出力ではなくて、
黒いフィルムのようなものの黒部分だけが転写される、というような出力方法だった。
プリンタはA4までしか出力できなかったから、
少しずつの部分ごとに出力して、それぞれスチレンパネルに貼り、周囲を切る。
そのスチレンパネルを100号サイズのカンバスの上でつなぎあわせて貼って、
大きな一枚の絵に仕立て上げ、大ボケツ展に出したんだよ」

最初に発表した大ボケツ展のあとは、
カンバスの木枠を外して、ほったらかしておいたんだそう。

中ザワ「作品をむき出しで家に置いていたら、
ホコリなどのゴミが付着してしまった」という状態で、
一時は捨てようか、とも思ったらしい(って滅失絵画じゃん)。
それは、「出力したものを作品とするか、データ自体を作品とするか」
という考え方に拠ります。
中ザワ「感情的には捨てたくないが、
データ自体を作品とするという理論を言うのだったら、
この作品を捨ててもよいのではないか」と悩んだそうです。

でもその後、きちんと保管することを決めた中ザワさん。
サイズとしてはカンバスのほうが出力したものより大きかったので、
ふちというか周りのカンバス地を切り取って、
サイズに合わせた木枠をつけて、保存をしているんだそうです。

藤田「なんで海なんですか?スイカワリとかハナイチモンメなんですか?」

この個展を開催するにあたり、
CGをするということ自体が、実は的はずれ的な事態なのでは?
という問題意識を感じた中ザワさん。
それを自覚的かつ自虐的に演出してみせたいと思ったそう。
冬に行った展覧会だったので、
「冬なら冬のものを出す・・・じゃなくて夏のことかよ!」
「何考えてるか意味ワカンナイ」
「この人ちょっとどうかしてる」
という感を狙ったテーマ設定だったんだそうです。

それと、当時あったシミュレーショニズムという考え方も関係しています。
例えば、日比野克彦がグラフィック展で大賞をとってデビューした作品は、
“本当の飛行機”ではなく、“おもちゃの飛行機”だったというように、
あるいは、
YMOの音楽は、
“インベーダーゲームの音響みたいなものを、わざと、敢えて音楽として提示する”
というように、
本物じゃないもの、ゲームのような架空のものを表現することが、
問題意識としてあったらしい。

そこで中ザワさんは、実際にはないけど、
コンピューターゲーム「スイカワリ」とか、
コンピューターゲーム「花いちもんめ」とか、
もしあったらば、
と空想したその架空のゲームの画面を絵としたということになります。

ちなみに「セルフポートレート(大ボケツ第三番)」は、
当時ノートパソコンとかなかった時代だったけど、
「海辺でノートパソコンを使って自画像を描く」というシチュエーションがあったら
・・・ということで出来たものなんだそうです。

・・・いずれにしても、おつかれSUMMER、ですね。


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2007年03月02日

セルフポートレート(大ボケツ第三番)

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セルフポートレート(大ボケツ第三番)
1990
369×517ピクセル、93.5×130.7cm
紙にデジタルプリント、スチレンパネル、カンバス
撮影:黒川未来夫
発表歴:1990 個展「大ボケツ」HBギャラリー(東京)、2000 個展 佐野画廊(香川)、2001 病院ギャラリー(愛媛)、2005 個展「中ザワヒデキの展開展: 1990年から96年までのバカCG」ギャラリーセラー(名古屋)
Courtesy Gallery Cellar

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中ザワさんの家に、とある郵便物が届きました。
ポストからおもむろに取り出した小さな封筒には、
「T」という女性の名前が書いてありました。
「Tさんはこの間の岡崎や蒲郡で僕の作品を見てくれた人だ」
と中ザワさんは思いながら、家へ戻り、封を開けました。

入っていたのは、一枚のポストカード。
描かれていたのは、17年前の自分のポートレイト。
そう、本日の一品です。

Tさんは学生時代、中ザワさんのことを知らずに、
ただその画風に魅かれてポストカードを買っては友達に手紙を書く、
という少女だったよう。
初めて岡崎の対談で中ザワさんを見て、
過去の中ザワ作品に自分の青春時代に触れたものがあることに驚き、
この「大ボケツ第三番(SELFPORTRAIT-SUMMER)」のポストカードを使って、
中ザワさんにお礼かねがね手紙を書いてしまいました。

一方、中ザワさんは、
タイムマシーンではなく封筒に入ってやって来た、過去の自分と期せずして対面。
Tさんの青春時代の思い出を知る由も無く、しばらく呆然となってしまいましたとさ。


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2007年02月20日

静物

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静物
1990
400×640ピクセル
発表歴:1990 個展「大ボケツ」HBギャラリー(東京)、2005 個展「中ザワヒデキの展開展: 1990年から96年までのバカCG」ギャラリーセラー(名古屋)
Courtesy Gallery Cellar

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1月31日の「一日一品」でも触れたように、
発売されたばかりの「美術手帖」3月号で、
中ザワさんがセザンヌ「りんごとオレンジ」と
ムンク「叫び」について語っているのを、
私・藤田が聞き取って構成したものが掲載されています。

そこで中ザワさんがくれた画像は、
セザンヌを意識してバカCGで描いた(らしい)、という静物画。
自画像か?とツッコミを入れたくなる顔(らしい)も描かれています。
・・・私には背景がムンクに見えますが。

「美術手帖」、ぜひご高覧くださいませ。


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2007年01月10日

スイカワリ(大ボケツ第一番)

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スイカワリ(大ボケツ第一番)
1990
369×517ピクセル、93.5×130.7cm
紙にデジタルプリント、スチレンパネル、カンバス
撮影:黒川未来夫
発表歴:1990 個展「大ボケツ」HBギャラリー(東京)、2000 個展 佐野画廊(香川)、2001 病院ギャラリー(愛媛)、2005 個展「中ザワヒデキの展開展: 1990年から96年までのバカCG」ギャラリーセラー(名古屋)
Courtesy Gallery Cellar

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中ザワさんの記念すべき「バカCG」作品の第一作目。

当時の中ザワさんは、
「近代美術史テキスト」を書き終え、イラストレーターとして活動を始めようとしていた。
「CGを勉強したい」
と思っていたところに、突然舞い込んだ「2ヵ月後に個展」の話。
あわてて(当時はかなり珍しかった)パソコンを買い込み、CGで作品を作り始めた。

イラストレーションのギャラリーであるHBギャラリーで行われたのは、
2ヶ月連続の「PLACE」という企画展で、
8人の作家を紹介するというものだった。
中ザワさんはその第一回目の展示をすることになり、
展覧会のパンフレット用の図版を、モノクロで作ることになった。
(ちなみにそれをバカでかく出力し、出品作としたのが、上の画像である)

それまでの中ザワさんは、色を多用したアクリル絵画を描いており、
モノクロにためらいを感じた、と言う。
しかし作業を始めていくうち、
“モノクロ”も楽しい、画面の“ギザギザ”が面白いと思うようになっていった。

 ちなみに、この“モノクロ”“ギザギザ”は
 その後の中ザワ芸術に影響を与えている。
 
ゆえにこの作品をはじめ、
大ボケツ第二番も第三番も、粗いドットのようなタッチが特徴である。
わざと、と言うより、
コンピュータゆえの面白さ、と捉えていただければ幸い。

中ザワさんは
「(1990年1月に行われたため)真冬の展覧会なのに、真夏の作品です」
と言っている。
これが「大ボケツ」ってことか。

藤田個人的に思うのは、水着がハイレグである、ということ。
鈴木保奈美あたりの時代なんでしょうか。ダサい。
これまた時代(当時)を表現して、後(いま)見ると「大ボケツ」だね。


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