山本育夫さま
aw会員の皆様

中ザワヒデキです。このたびはお騒がせいたしております。
[aw-ml:1544]でのリクエストにお答えするかたちで
>少しギャラリートークをやって
みることにいたします(山本さまには色々気を遣わせてしま
い申し訳なく/有り難く思っております)。


まず、以下の8メールは全て私の仕業です。

1999.05.25配信[aw-ml:1498] ありがとうございました
1999.05.26配信[aw-ml:1501]  
1999.05.28配信[aw-ml:1517]  
1999.05.30配信[aw-ml:1523] 謹んで訂正申し上げます
1999.06.03配信[aw-ml:1526]  
1999.06.06配信[aw-ml:1531]  
1999.06.08配信[aw-ml:1532]  
1999.06.12配信[aw-ml:1543]  

これらは、私の知人のメールアドレス宛にBccで約900通ほど同
時配信しているものです。本aw-mlにおいては[aw-ml:xxxx]と
いうヘッダが自動的に付きますが、直接私からこのメールを受け
取っている方々にはそれは付きません。中には、私から直接と
aw-ml経由の二通を毎回受け取っておられる方もいらっしゃると
思います(お騒がせしております)。
また、お気付きのように差出人名は初回のみ「中ザワヒデキ」と
なっておりますが、それ以降は「 」としてあります。

私としては、本メールプロジェクト全体の意図は
1999.05.25配信[aw-ml:1498] ありがとうございました
1999.05.30配信[aw-ml:1523] 謹んで訂正申し上げます
を熟読していただければ、ある程度正確に伝わるはずであると考
えております。
一応、インターネット関係者からの取材記事がアスキーニュース
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/990611/topi07.html
に掲載されておりますので御興味ある方はご覧くださいませ。
またこのプロジェクトは個展とほぼ同時期、ほぼ同内容ですが、
無題であることも含め、メールはそれ自体で独立した作品のつ
もりです。
あと数日間、引き続きお騒がせすることになると思います。



さて本題のギャラリートーク的解説ですが、はじめにお断りしてお
きたいのは私は必ずしも解説は必要ないと考えていることです。よ
く私の作品は常人には理解できないと言われますが、人々に理解し
ていただくために作品発表しているわけではありません。私自身の
ため、より正確には私自身にもインストールされている純粋理性の
ために整合性ならびに必然性を持つべく制作発表しております。ギ
ャラリーでの個展、あるいはこのような他人のメールボックスを利
用したEメール配信は、私にとっては正しい作品奉納の儀式、より
下品な言葉を使うとするなら、呪いを発効させるために必要不可欠
な手順であるといったような位置づけです。

しかしながら解説を求められれば説明しないわけではありません。
以下に作者の意図の一部を書くことにいたします。



(1)
「●」「○」「 」による作品群…1501/1517/1523/1526

 美術作品は色彩論的なものと形態論的なものに二極化されると考えま
すが、前者の典型である色彩絵画は、本質的には点描画であると認識し
ています。点描画では、いかなる理由をもってそこに点を布置するかが
問題となります。その一方の極みはまったくランダムかつ無意味に点を
独立した点として布置すること、そしてその逆は、明確な統制意思のも
とに点を連ねて有意の線を生むことです。後者はもはや線描画に近く、
点描画とは言えません。がしかし、点描画にいかに線を持ち込み、ある
いは線を排除するかがスーラの昔から大問題かつ醍醐味となっているこ
とはおわかりいただけると思います。
 私は、点がまるで無意味に互いに独立しているのか、それとも線とし
て意味をなすかのちょうど瀬戸際の状態を理論的に作り出したいと考え
ました。そこで思い当たったのが囲碁です。陣地を囲い込むことをゲー
ムの目的とする囲碁は、言うなればいかに点を連ねて線とし、あるいは
相手が線となるのを阻止するかという戦いです。囲い込みに成功すれば
有意の境界線、失敗すればただの無意味な点となります。
 ちょうど、囲い込みに成功しかつ失敗したような状態として、「セキ
(持)」があります。具体的には一手でも打つと敗北するため双方とも
に手が出せない、線としては辛うじて生きているが勝ったとも言えない
状況です。私は、盤面全体を多数の「セキ」で埋め尽くすビジュアルを
考案しました。一手でも打てば、盤面全体の自分の石全てが、途端に水
泡に帰します。それがこの三作です。囲碁のルールと目的に照らして必
然性のあるビジュアルは、同じことを問題にしてきた美術史に照らして
も必然性に満ちているとの信念に裏打ちされています。
 インタラクティブ囲碁のホームページを作っている森泰樹氏が本作を
取り上げ、素晴らしいページを作って下さいました。御興味ある方はご
覧くださいませ。
http://playgo.to/nakazawa/index.html



(2)
漢字と平仮名と空白文字による作品…1531

 完璧な色彩絵画を制作しようと試みたシリーズの一点です。前述通り
点描画では個々の「点」が問題となりますが、その「点」を視覚生理的
に着彩している限りは、生理感覚という誤謬を免れないと考えました。
私が見たい完璧な色彩絵画とは、論理体系の中に派生する色彩感覚に依
拠する作品です。具体的に、個々の「点」には赤や青や黄などの代わり
に記号を採用しました。記号としては、私が普段論理を紡ぐところの日
本語の文字体系から、JIS表を使い、ある法則のもと取り出しました。
 本シリーズの第一作と第二作については、山本氏が主宰するLR誌11
号で千葉成夫氏が9ページにわたって論じて下さっています。第三作に
あたる本作では具象画をある程度意識し、「海景」を構築した積もりで
す。さんずい、さかな扁の文字の使用が端的にそれを物語るほか、海面
のきらめきを暗示する空白文字の半不規則的分布には、素数表を用いま
した。



(3)
○に凸と凹を付する作品…1532

 美術作品は色彩論的なものと形態論的なものに二極化されると考えま
すが、後者の典型である単体彫刻は、本質的には表面の凸凹であると認
識しています。ここで、いわゆる三次元彫刻の場合には表面は二次元の
曲面となりますが、次元を一段低くした二次元オブジェの場合には、表
面は一次元の曲線となるという考え方を披露しておきます。本作では単
体彫刻として二次元オブジェを取り上げ、曲線の生成法を問題にしてい
ます。
 曲線の生成が凸凹を律することと相同だとすれば、そのための式が単
体彫刻そのものです。私は正円から出発し、定められた個数の変曲点を
打って凸凹を生成することにしました。次に、そのようにしてできた各
々の凸部分と凹部分に、再度、定められた個数の変曲点を打ってさらな
る凸凹を生成します。ある規則のもとに一定回数この操作を繰り返すと、
7420個の変曲点が打たれ、それだけの回数曲げられた閉曲線が出来上
がります。その閉曲線領域生成を意味する式が、本作です。



(4)
ハングルの部品と片仮名による作品…1543

 前述の単体彫刻の次元をさらに一段低くすると、一次元の線の中の0
次元の点の列が問題となるわけです。単旋律音楽における音符の列、単
語における文字列、遺伝子における塩基配列などは、すべてこの意味で
単体彫刻と相同なモデルであると言えます。
 ある規則のもとに単体彫刻モデルを制作するにあたって、表音文字体
系であるハングルのパッチムと呼ばれる文字群に着目しました。日本語
の仮名が基本的には一つの正方形文字で「子音+母音」を指示するのと
は違って、部品を組み立てて一つの正方形内に収めるハングルでは、
「子音+母音+子音」という一文字を作ることができます。これをパッ
チムといいますが、パッチムに使用できる部品は大雑把に言って「フ」
「A」「匸」「己」「ロ」「∀」「o」の七種類です。ハングルでは多
数の母音がありますが基本母音字かつ単母音字は「├」「┤」「┴」
「┬」「─」「│」の六種類です。七種の子音部品でしりとりをし、間
には六種の母音字を順に挟んで回転させるという単体彫刻を作ることが
できます。
 片仮名でも同様の単体彫刻を作ることができます。パッチムにあわせ
て七種の子音を選び、日本語の五種の母音を順に組み合わせて回転させ、
二つの片仮名で一単位とすることができます。たとえば「カナ」はア段
の「k→n」ですから、次はイ段の「n→t」である「ニチ」となり、
その次はウ段の「t→r」である「ツル」となるわけです。
 ここで、平仮名でなく片仮名を使用する理由は、本来片仮名は扁か旁
に由来するため二個合わせてようやく一人前と考えてもよいからです。
 さて、これら二つの単体彫刻を同期させて配置することを次に考えま
す。音楽ではポリフォニーというジャンル、音響詩では同時進行詩とし
て知られる形態です。美術においては色彩論的なものと形態論的なもの
のはざまに位置する形式のはずですが、デペイズマン、ジャクスタポジ
ションなどの語がやや近いものの、同期的意味あいを兼ね備えた適切な
用語はないように思います。パッチムに依拠した本作では、7と6と5
の最小公倍数である210単位を連ねることによって、同期の回転が一
巡します。つまり210個のパッチムのためのハングル部品と、210
個のパッチムのための片仮名を、それぞれ垂直に隣接させたものが本作
です。




以上、本メール発送前段階における自作解説でした。

ギャラリートークとはいえ、些末または本質的すぎるご質問には、公開
の場では答えにくい場合があります。そのような場合、個人的なメール
のやりとりとさせていただく事があるかもしれないことを、あらかじめ
お断りいたします。

また、以下の私のホームページやギャラリーNWハウスにも、また別の
情報がありますのでご参考にしていただければと存じます。

1999.06.14



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中ザワヒデキ(アロアロインタナシナル)
nakazawa@aloalo.co.jp
http://www.aloalo.co.jp/nakazawa/
網 上 楼 閣 1 9 9 9.0 5.2 6 改
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